大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

奈良地方裁判所 昭和54年(ワ)127号 判決 1981年4月28日

主文

1  昭和五四年(ワ)第一二七号本訴事件につき原告(反訴被告)の本訴請求を棄却する。

2  昭和五四年(ワ)第一九二号、同五五年(ワ)第三一号反訴事件につき、原告(反訴被告)は、

被告(反訴原告)村井紘一に対し、別紙物件目録(一)、(二)記載の土地につきなした別紙登録目録(一)記載の仮登記の、

被告(反訴原告)荒木信一に対し、同物件目録(三)記載の土地につきなした同登記目録(一)記載の仮登記の、

被告(反訴原告)畑敏美に対し、同物件目録(四)記載の土地につきなした同登記目録(一)記載の仮登記の、

被告(反訴原告)中村修に対し、同物件目録(五)記載の土地につきなした同登記目録(一)記載の仮登記の

それぞれ抹消登記手続をせよ。

3  訴訟費用は、本訴および反訴を通じ、原告(反訴被告)の負担とする。

事実

一、本訴請求

(一)  原告(反訴被告、以下単に原告という)の本訴請求の趣旨

1  被告井上桝市(以下被告井上という)は原告に対し、別紙物件目録(一)ないし(五)記載の各土地(以下本件(一)ないし(五)の土地という)につき同登記目録(一)記載の仮登記(以下本件(一)の仮登記をいう)に基き昭和五四年三月一六日代物弁済を原因とする所有権移転本登記手続をせよ。

2  原告に対し、

(1) 被告(反訴原告)村井紘一(以下被告村井という)、同奈良県信用保証協会(以下被告協会という)は、本件(一)、(二)の土地につき

(2) 被告(反訴原告)荒木信一(以下被告荒木という)、同協会は、本件(三)の土地につき、

(3) 被告(反訴原告)畑敏美(以下被告畑という)は、本件(四)の土地につき、

(4) 被告(反訴原告)中村修(以下被告中村という)は、本件(五)の土地につき、

原告が被告井上との間で1記載の所有権移転本登記手続をすることを承諾せよ。

3  原告に対し、

(1) 被告村井は本件(一)、(二)の土地を、

(2) 被告荒木は本件(三)の土地を、

(3) 被告畑は本件(四)の土地を、

(4) 被告中村は本件(五)の土地を

引渡せ。

4  訴訟費用は被告らの負担とする。

5  前記3につき仮執行の宣言。

(二)  本訴請求の趣旨に対する被告らの答弁

原告の本訴請求を棄却する。

本訴訴訟費用は原告の負担とする。

(三)  本訴請求原因

(1)  原告は被告井上との間で、昭和三六年二月一日、それまでの商取引によつて生じた原告のビニール加工材料売掛代金の同日現在残高六八五万円につき、利息年一割五分、期限は定めずとして、準消費貸借契約を締結するとともに、同被告の所有にかかる本件(一)ないし(五)の土地(以下本件各土地という)につき、同被告が右債務を弁済しないときは、原告の予約完結の意思表示によつて右土地の所有権を弁済に代えて原告に移転する旨の代物弁済一方の予約を締結し、同月二五日受付をもつて、本件(一)の仮登記を経由した。

(2)  昭和五四年三月一六日原告は被告井上に対し、本件各土地を前記準消費貸借の元利金の内金一、三七四万円の代物弁済として予約完結する旨の意思表示をなし、同被告はこれを承諾したから、原告は同日右土地の所有権を取得した。

(3)  被告村井は本件(一)、(二)の土地につき別紙登記目録(二)記載の登記(以下本件(二)の登記という)をなし、かつ同土地を占有し、被告荒木は、本件(三)の土地につき別紙登記目録(三)記載の登記(以下本件(三)の登記という)をなし、同土地を占有し、被告畑は本件(四)の土地につき別紙登記目録(四)記載の登記(以下本件(四)の登記という)をなし、同土地を占有し、被告中村は、本件(五)の土地につき別紙登記目録(五)記載の登記(以下本件(五)の登記という)をなし、同土地を占有し、被告協会は本件(一)(二)の土地につき別紙登記目録(六)記載の登記(以下本件(六)の登記という)を、本件(三)の土地につき同登記目録(七)ないし(九)記載の登記(以下本件(七)ないし(九)の登記という)を了している。

(4)  よつて原告は、本件各土地所有権に基き被告井上に対しては、本件各土地につきなした本件(一)の仮登記に基く昭和五四年三月一六日代物弁済を原因とする所有権移転本登記手続をなすことを求め、被告村井、同荒木、同畑、同中村、同協会に対しては、前記各登記はいずれもその順位が原告の仮登記より遅れるから原告に対抗できないので原告の所有権移転本登記手続をなすことの承諾を求めるとともに被告協会を除くその余の被告らがそれぞれ占有する本件各土地の引渡を求めるため本訴請求におよぶ。

(四)  本訴請求原因に対する被告らの答弁

(1)  被告井上、同荒木、同村井、同畑

本訴請求原因(1)の事実中利息の点を除きその余の事実は認める。利息は定めなかつたものである。

同(2)の事実中予約完結の意思表示の点は否認、その余は争う。同(3)の事実は認め、同(4)の主張は争う。

(2)  被告中村、同協会

本訴請求原因(1)の事実中原告主張の本件(一)の仮登記の存することは認め、その余は不知・同(2)の事実中予約完結の意思表示の点は不知、その余は否認。同(3)の事実中右被告らの登記については認める。同(4)の主張は争う。

(3)  被告井上、同荒木、同村井、同畑、同中村の抗弁

仮に原告が本件土地につき代物弁済予約完結請求権を有していたとしても、原告主張の準消費貸借の債権は期限を定めずというのであるから、消滅時効は契約成立の時から進行し、右債権並びに完結権は、昭和三六年二月一日から一〇年を経過した同四六年二月一日の経過とともに時効により消滅した。

(4)  被告井上の主張

昭和五四年三月原告は同被告方を訪れ、本件(五)の土地が桜井市に買上げになるが、自分は仮登記をしているので債務確認書に署名してくれると買上代金の一部が自分に交付になる。そうすると、交付金の一部を謝礼として渡す、第三者には迷惑をかけないというので、同被告は原告の言を信じ、その旨書面に書いたところ、本訴が提起されたのであり、同被告は、以前自己破産の申立てをなし、当庁昭和五二年(フ)第一号事件として係属し、破産宣告をうけたが、原告はその際破産債権の届出をしなかつたし、同被告も原告を破産債権者名簿に記載したこともなく、前記書面は、債務承認の意思で記載したものではない。

二、反訴請求

(一)  被告村井、同荒木、同畑(以上昭和五四年(ワ)第一九二号事件)、同中村(同五五年(ワ)第三一五号事件)の反訴請求の趣旨

主文第二項同旨。

反訴請求費用は原告の負担とする。

(二)  反訴請求の趣旨に対する原告の答弁

反訴請求はいずれも棄却する。

反訴訴訟費用は右被告らの負担とする。

(三)  右被告らの反訴請求原因

(1)  右被告らは、原告の本訴請求原因(3)記載のとおり本件各土地につき所有権取得登記を了し本件各土地を所有している。

(2)  原告は、反訴請求の趣旨記載のとおり本件各土地につき本件(一)の仮登記を有するけれども、原告と被告井上間に成立した準消費貸借は、期限を定めないので契約成立の時から消滅時効が進行し原告の債権および予約完結権はすでに時効により消滅している。

(3)  よつて右被告らは本件各土地の第三取得者として時効を援用し、本件各土地所有権に基き原告の右仮登記の抹消登記手続を求めるため反訴請求におよぶ。

(四)  反訴請求原因に対する原告の答弁

(1)  反訴請求原因(1)の事実中、右被告らが、主張のとおり各所有権取得登記を経由していることは認めるが、その余は否認、同(2)の事実は否認、同(3)の主張は争う。

三、右被告らの時効消滅の主張に対する原告の答弁

右被告らが、本件各土地の第三取得者にあたるとしても、民法一四五条の当事者ではないから、被担保債務および代物弁済予約完結権の消滅時効を援用することはできない。仮に消滅時効が完成したとしても、その後の昭和五四年三月中旬頃、被告井上はその債務を承認し、時効の利益を放棄した。原告は、同被告の自己破産については何も知らず本件債権につき破産債権の取扱いはなされていないから右破産の効力をうけるものではなく、後記詐欺の主張も否認する。

四、被告井上、同村井、同荒木、同畑の再答弁

被告井上は、前記のとおり破産宣告をうけた者で支払能力はなく、原告から交付金の一部が貰えると信じて前示書面に署名したもので、時効の利益を放棄する意思はなかつたから、右署名捺印をもつて時効の利益を放棄したというのであれば、原告の詐欺によるものとして、昭和五四年九月二八日付同五五年一月二九日陳述の準備書面によりこれを取消す。

仮に、被告井上が時効の利益を放棄したとしてもその効果は相対的であり、同被告およびその承継人以外の者には影響を及ぼさないから他の被告には関係がない。

五、証拠(省略)

物件目録

(一) 桜井市大字大福一八三番一

宅地 四〇九・九一平方メートル

(二) 同 市大字同 一八三番五

宅地 四六・二八平方メートル

(三) 同 市大字同 一八三番七

宅地 九五・八六平方メートル

(四) 同 市大字同 一八三番八

宅地 九九・一七平方メートル

(五) 同 市大字吉備六九六番二

宅地 七二・七二平方メートル

登記目録

(一) 所有権移転請求権保全仮登記

奈良地方法務局桜井出張所昭和三六年二月二五日受付第六四二号

原因 同年二月一日代物弁済予約

権利者 大阪府八尾市幸町一丁目一番地

株式会社 丸為商店

(二) 所有権移転

同出張所昭和四四年一二月二五日受付第六三二七号

原因 同年同月一〇日売買

所有者 桜井市大字大福九六番地

村井紘一

(三) 所有権移転

同出張所昭和三九年二月二一日受付第六九二号

原因 同年同月一九日共有物分割

取得者 桜井市大字大福八五番地

荒木信一

(四) 所有権移転

同出張所昭和五一年二月一六日受付第五四八号

原因 同五〇年七月七日売買

所有者 桜井市大字大福一一二番地

畑敏美

(五) 所有権移転

同出張所昭和四六年一一月一八日受付第四九一二号

原因 同年一〇月一〇日売買

所有者 桜井市大字吉備六九六番地の二

中村修

(六) 根抵当権設定

同出張所昭和五三年八月三一日受付第五五八八号

原因 同年同月二八日設定

極度額 金 一八〇〇万円

債権の範囲 保証委託取引

債務者 前記 村井紘一

根抵当権者 奈良市法〓町一六三番地の二

奈良県信用保証協会

(七) 根抵当権設定

同出張所昭和四七年七月一二日受付第三二五六号

原因 昭和四七年七月一一日設定

極度額 金 一八〇〇万円(抹消)

債権の範囲 保証委託取引

債務者 前記 荒木信一

根抵当権者 前記 奈良県信用保証協会

(八) 八番根抵当権変更

同出張所昭和五二年二月一二日受付第六一二号

原因 同年同月一〇日変更

極度額 金 一二〇〇万円

(九) 根抵当権設定

同出張所昭和五二年二月一二日受付第六一三号

原因 同年同月一〇日設定

極度額 金 八四〇万円

債権の範囲 保証委託取引

債務者 桜井市大字大福一八四番地

荒木衛

根抵当権者 前記 奈良県信用保証協会

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例